夏が来る〜〜きっと夏が来る〜〜〜♪♪♪
毎年この時期になると夏曲ランキングとか夏曲ベストで溢れかえるくらい、人間ってのは夏になるとテンションが上がる生き物だよな。もちろん名曲が多いのも事実だけど。
夏にぴったりなシティ・ポップをはじめに、さっきサメちよが歌ってた大黒摩季も、サザンもケツメイシも、昭和〜平成初期の楽曲が今の若者たちにとっては古くてダサいものじゃなくて、エモくて新しいものになってるのが面白いよね。
今回はSame Recordsが選ぶ「夏になったら聴きたくなる曲」を10曲紹介していくよ〜!夏を求めて彷徨っているみんな、よかったらあなたのプレイリストに加えてみてね〜!
定番どころは色んなテレビ番組やランキングで紹介されていると思うので、「Same Records」ならではという観点でチョイスしてみました!好みゆえにバンドに偏り気味ですが、オールタイムで選曲。意外とまだ知られていない隠れた名曲や、夏の再解釈曲まで全部で10曲(+1)を解説付きでご紹介。
フジファブリック「陽炎」
フジファブリックの夏の名曲といえば「若者のすべて」ですが、こちらは邦楽史にも残る名曲であり定番になりつつあるので、個人的には「陽炎」もぜひ聴いてほしくてピックアップ。
叙情的なロックを武器とするフジファブリックは、デビューシングルから4枚を「四季盤」1としてリリース。その中で2004年7月に「夏盤」としてリリースされたのがこの「陽炎」という楽曲。夏の夕立が上がる頃に立ち込める独特の青くさい香りを嗅ぐと、この曲が聴きたくなり、幼少期の思い出と共にこの楽曲が想起されます。
志村正彦が山梨県富士吉田市出身なのもあって、自然豊かなところで育った人や思い入れを持つ人は、特にこの曲の持つ強烈なノスタルジーに共感を覚えるはず。そうでなくても、脳裏に幼少期の鮮烈な思い出が蘇ることでしょう。誰もを少年少女だったあの頃へ連れ戻してしまうパワーを持った楽曲なのです。そしてこの楽曲のギターソロとアウトロのキーボードのフレーズが秀逸すぎます。どう聴いても隙がない。おかしい。良すぎる。
私の中では夏の名曲を語るとなったら、この一曲だけは絶対に外せません。
台風クラブ「処暑」
京都発、“日本語ロックの西日”3人組ロックバンド、台風クラブ。
タイトルの処暑とは何か辞書で引いてみました。
処暑(しょ-しょ)
二十四節気の一。8月23日ごろ。暑さが落ち着く時期の意。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
まさに2017年8月23日に発売した名盤ファースト・アルバム『初期の台風クラブ』収録の一曲が「処暑」です。
このアルバムもそうですが、台風クラブ自体にどことなく夏の匂いが漂っている気もする。台風クラブには、日本の湿気が多くて茹だるような夏がとてつもなく似合うんです。四畳半の畳の匂いだとか、扇風機だとか、ちょっとコンビニに煙草を買いに行った帰りの土手の匂いとか、そういう当たり前で日常に溶け込み過ぎているものの良さを再確認する作業をさせてくれる。ありのままで、ありふれている1日の夕暮れを切り取っただけなのに、どうにも心を動かされてしまう。どこにでもあるような夏の風景の描き方こそが、“駄目な若者だった瞬間がある人”や、今まさに駄目な若者である人にとっての強烈な共感を生むのだと思います。
歌詞の形容詞ひとつひとつをとっても、悲観的な言葉が散りばめられているのに、今、目の前に広がっている光景やこの瞬間をどこか悪くないと思ってしまっている。
そんなところがこの曲のノスタルジーを加速させています。
JITTERIN’JINN「夏祭り」
1986年結成。バンドブームの最中、当時の若者に圧倒的な人気を誇ったバンドJITTERIN’JINN(ジッタリン・ジン)。1990年8月29日発売の4thシングルが「夏祭り」。後の2000年(ちょうど10年後の同日)にガールズバンドWhiteberryが彼らの名曲である「夏祭り」をカバーし、これが大ヒットを記録し現在まで続く夏の大定番曲になりますが、オリジナル曲であるジッタリンジンの夏祭りがめちゃくちゃ良いのでぜひ聴いてほしい。
元々ジッタリン・ジンはスカコアやスカパンクがベースにあり、スカと歌謡曲を融合する絶妙なバランス感覚が一級品。夏祭りの喧騒とひと夏の切ない恋の一幕が情感たっぷりなサウンドで表現されています。特にこの曲のドラムが遊び心があってカッコいい。まさに打ち上げ花火のようであったり、祭りの人混みの中を駆けて行っているようでもあり、盆踊りの和太鼓のようでもあったり、聴き手の想像力や思い出を呼び起こさせます。
Whiteberryの方は若い女の子のパワフルでエネルギッシュな魅力とこの楽曲自体が持つエモーショナルな部分が上手く噛み合って大衆に広く愛されるカバー曲になりましたが、オリジナル曲にはえも言われぬ哀愁と骨太さがあって、聴けば聴くほど良さを噛み締められる名曲だと思います。
八十八ヶ所巡礼「幽楽町線」
唯一無二、圧倒的な存在感を放つバンド“八十八ヶ所巡礼”。テクニカルで攻撃的なサウンドでありながら、全てを包み込む度量の大きさを兼ね備えた魔族による親孝行バンドです。
八十八ヶ所巡礼にとって「8という数字」、「8のつく日」は特別なので、それに託けて様々なライブや催し事を開催します。そのため、夏、とりわけ8月といえばやはり八十八ヶ所巡礼なくして語れません。
夏って爽やかで希望に満ち溢れているイメージが大きいですが、それだけじゃないですよね!ホラーや怪談の季節でもあります。肌にまとわりつくような湿度の高い熱帯夜。そんな夜に見る魘されるような良くない悪夢。恐ろしいんだけど本能的に惹かれてしまう魅力があります。
2018年8月18日発売『凍狂』収録「幽楽町線」はそんな夏の逢魔時を連想させるサウンドが魅力の怪曲。
この楽曲では踏切をバンドサウンドで表現するというセンス爆発なイントロとお経のようなメロディからグッと心を掴まれ、その後の怒涛な展開と緩急に息をつく間もない4分半を味わえます……。
神聖かまってちゃん「23才の夏休み」
平成のインターネットから世に出て、多くの弱者たちを救ったロックバンド“神聖かまってちゃん”。2010年3月10日発売デビューミニアルバム『友だちを殺してまで。』に収録されている「23歳の夏休み」。
音質もガビガビで音割れもしていますが、メロディやキーボードの旋律が美しく、あの夏も初期衝動もそのまま詰め込まれた名曲。神聖かまってちゃんと当時の閉鎖的なネット社会、そして社会と馴染めなかったりどことなく居心地の悪さを感じながら生きている若者たちとの親和性は非常に高く、この曲が収録されたこのアルバムはそんな時代を象徴する名盤だと思います。
個人的な話ですが、この曲がリリースされた頃は23歳はまだ先の話でしたが、23歳の夏になったらこの曲を思い返して聴いてみたりしていました。気がつけば10年が経ち、次は「33歳の夏休み」を33歳に聴くイベントがもうすぐそこに待ち構えていると思うと不思議な感じがします。
TOTALFAT「Summer Frequence」
2000年結成。八王子発メロディックパンクバンド“TOTALFAT”!
メロディック・ハードコアを軸にハードロックやEMO、ヘヴィメタルなどを吸収したスタイルで全国津々浦々のライブハウスを熱狂させ続けているライブバンドです。
2010年発売『OVER DRIVE』から「Summer Frequence」。こちらは夏フェスシーズンにぴったりの気持ちのいい夏曲。ミュージックビデオを見ていただくと分かるように、底抜けに明るいキャッチーなメロディとまっすぐで少しお馬鹿な感じの歌詞がめちゃくちゃポップパンクなナンバー。夏の思い出を彩るにはこういう曲が必要不可欠。
飛び跳ねて歌って楽しめる楽曲でありながら、こちらのshort ver.には収録されていない後半部分では、どことなく明るい中に切なさを感じさせる展開もあったりして、ライブ映えする最高の夏曲です。
バレーボウイズ「雨があがったら」
京都発。2015年、京都精華大学の在学生により、学園祭である「木野祭」に出演するために結成した7人組バンド“バレーボウイズ”。惜しまれながら2020年9月に活動終了を発表し、5年間の“なつやすみ”に幕を下ろしました。
フォークや歌謡曲を感じさせるノスタルジーな楽曲の数々が魅力。バレーボウイズの描く夏はどことなくレトロで、肩肘の張っていない等身大の青春が詰まっています。
2019年7月31日発売の両A面シングル『雨があがったら/セレナーデ』から「雨があがったら」。
こちらは夏の恋物語をテーマにした楽曲。“喫茶店で頼んだ冷珈(レイコー)が…”という歌詞をはじめに(※アイスコーヒーのことを関西圏では冷コーと呼ぶ)、そこかしこに京都という土地のレトロ感と学生の眩しさが香るというか、没入感と共に日常を覗き見たような感覚にさせてくれます。
解散という言葉は使っていなくとも、確かに終わってしまった彼らの“なつやすみ”。5年間の活動の中で生まれた曲はどれも素晴らしい曲なので、聴いたことがない人は今からでもぜひ出会ってくれたら嬉しいです。
RAGFAIR「恋のマイレージ」「Sheサイドストーリー」
思い出し方が最低で申し訳ないんですが、こないだ回転寿司に行った際「カニフェアやってるよ」と言われ「RAG FAIR♪」と脳みそを使わず口にした瞬間、めちゃくちゃ好きだった思い出が蘇ってきました。オリジナル曲もカバー曲も良くて、シングル、アルバム、DVDと集めていた日々。あとコントも面白かったな。ちょうどこの記事書こうと思っていたので、夏といえばRAGFAIRを忘れちゃいけないよな…と、良く言えば運命的な再会を遂げたところです。
当時はまだ小学生でした。お笑いトリオ・ネプチューンの青春ドキュメンタリー番組『力の限りゴーゴゴー』内の「ハモネプ」というコーナーで一躍話題となったアカペラグループ“RAG FAIR”(ラグフェア)。
特に2002年6月19日に同時発売された「恋のマイレージ」と「Sheサイド ストーリー」の2曲はデビュー2作目にしてオリコン初登場1位を記録しているので、記憶にある人も多いのではないでしょうか。この二つはどちらも夏の恋を歌う曲でありながら、全く正反対の魅力がある2曲。
「恋のマイレージ」は土屋礼央の見た目も歌声も華やかなリードボーカルが光るアッパーな夏曲。これアカペラなの!?と驚かされるくらい厚みのあるサウンドは、ボイスパーカションの引き出しの多さとレベルの高さが成せる技だと思います。
一方「Sheサイドストーリー」は、アカペラの持つ優しさを最大限に生かした少し切ない夏のラブソング。Sheサイドストーリーは沈んでいく夕陽と煌めく水面が浮かんでくるような美しさと、歌謡の匂い漂わせたメロウなミディアムナンバーなので、何かきっかけさえあったらリバイバルヒットのポテンシャルを秘めてる名曲だと思います。
ちょっと選びきれなくて2曲になっちゃいましたが、私のようにRAGFAIRをふと思い出して懐かしんでいる人も、知らなかった人もぜひ聞いてほしい夏曲です。
でんぱ組.inc「ノットボッチ…夏」
2007年オープンのライブ&バー「秋葉原ディアステージ」から「萌えキュンソングを世界にお届け」をキャッチフレーズに、2010年頃より秋葉原を拠点に活動を本格始動。メンバーの増減を繰り返しながら、2025年初頭にエンディングを迎えることを発表した“でんぱ組.inc”(でんぱぐみインク)
いわゆる電波ソング2を武器に着々と知名度を広げ、日本武道館、全国ホールツアーを行う成長し、人気アイドルの道を駆け上って行った彼女たちの2013年10月2日発売8thシングル『W.W.DⅡ』のカップリング曲「ノットボッチ…夏」が隠れた名曲です。
秋葉原発ということもあり、それぞれ色々なタイプのオタクが集まった彼女たちは、ステージに立つアイドルでありながら、弱者の気持ちを知っている。だからこそオタクたちを筆頭に聴く者の心の奥底まで踏み込めるのではないでしょうか。二転三転する曲展開で楽しませながらも、サビの真っ直ぐな歌詞に胸を打たれます。可愛くてキラキラ輝いているのにどこか切ない。きっと永遠には続かない“今”を生きている輝きを、いつか終わってしまうこの夏と重ねたどこか切ないアイドルソング。
andymori「グロリアス軽トラ」
2007年結成。スリーピース・ロックバンド“andymori”(アンディモリ)
2014年の解散まで5枚のアルバムと1枚のEP、ライブアルバムを2作出していますが、どれも名盤です。オリジナル盤のLPはプレミアがついて高騰していましたが、ついに今年2024年、アルバム5作品をアナログ再発ということで今からワクワクが止まりません。擦り切れるほど聴いても名盤は輝きを増すばかり。
2010年発売2nd『ファンファーレと熱狂』のラストを飾る一曲、「グロリアス軽トラ」。
牧歌的な美しいロックはandymoriの魅力ですが、この楽曲も例に漏れず。目を閉じれば青空と田舎の風景が浮かんできます。呑気で穏やかな調子ですが、少し引いたところから物事を見ている感じが仄かにする。舗装されてない道を軽トラックが行くかのようなベースラインとドラム。脱力感のあるギターとボーカル。口ずさみたくなるキャッチーなメロディー。夏になるとこの曲が自然と聴きたくなり、歌いたくなります。ケアンズの空の下、ベニスの空の下、そして所沢の空の下…とイマジネーションもしくは思い出と現在の自分が重なっていく感じがして、曲の世界に没入できるのもこの曲の好きなところです。
andymoriは曲も素晴らしいですが、歌詞も素晴らしい。抽象的や難解だったり、時にはシンプルに綴られる歌詞の美しさに、andymoriはやはり稀有なロックバンドだなと感嘆するばかりです。
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- 【もっと深掘り解説】フジファブリック「四季盤」…フジファブリックは、2004年のメジャーデビューから4作品を四季(春夏秋冬)をテーマにしたシングル連作シリーズという形でリリースした。その4作品を総称して「四季盤」と呼び、2004年4月発売「桜の季節」を「春盤」、同年7月発売「陽炎」を「夏盤」、同年9月発売「赤黄色の金木犀」を「秋盤」、翌年2005年2月発売「銀河」を「冬盤」と呼ぶ。 ↩︎
- 【用語解説】電波ソング…同人音楽やアニメ・ゲーム音楽から発展した音楽ジャンルのひとつ。オタク文化の中で発展したジャンルで、美少女アニメやゲームなどのテーマ曲として、萌え要素が含まれた萌え系電波ソングが2000年代前半に大きな盛り上がりを見せる。歌詞がブッ飛んでいたりBPMが高く予測不可能な展開をするトンデモ曲やキワモノ曲を指すことも。アイドルにおいては上記の要素を含みながら、よりヲタ芸の打ちやすいキャッチーで速い楽曲、そしてテクノポップ的要素がある楽曲を電波ソングとして指すことが多い。 ↩︎