CD
2020年代に入り、海外ではレコード盤(LP/EP合わせて)の売り上げが CDを追い越したなんてニュースもありました。「今や CDが売れる時代ではなくなっている」、「CDは時代遅れだ」なんていう意見は、ミリオンヒットが続出していた90年代のCD全盛期に比べたらごもっともなのかもしれません。
そもそも「CD」自体があんまりよくわからない、というZ世代1の方、もしくはCDは知ってるけどちゃんと知りたいかもという方はこちらの記事をぜひご覧ください。
CDの魅力を語りたい
1.好きなバンドのCDこそ買うべき
だってサブスクで聴けるし。CDなんていらないじゃん
そんな声もありますよね……。
最近はサブスクだけで聞いている方も多いのかもしれませんが、CDやレコードなどのフィジカルファンとしては物申したい意見!実はレコードファンの方でも「CDは基本買わない」という人もいるし、音質や資産価値としての面ではレコードの方が高いので、そう言った意味では CDをコレクションする理由を疑問視される人の意見も分かります。
しかし!配信で満足してしまっている方に向けてぜひ CDをオススメしたい理由は、好きなアーティストの CDこそ買うべきだからです。
実はサブスクでのアーティストへの利益はかなり低いんです。バズるきっかけにはなるかもしれませんし、話題のプレイリストに入り多く回れば大きな利益を生む可能性はありますが、残念なことに現状サブスクだけでは食べていけません。これが地道に活動しているバンドマンにとってはかなり辛い問題。好きなバンドに素晴らしい楽曲を生み続けてもらうためには、CDを買うのが一番の応援になります。アーティストの配分を考えてサブスク解禁に踏み切らないインディーズレーベルもあるくらいですし、それもまた音楽やバンドに対する愛とも言える。
個人的には、サブスクが悪だとまでは言いませんが、好きなバンドのCDは買って応援した方がいいと思っています。もちろんCDも買ってライブも行って物販も買っていれば最高です。
2.体験すら思い出になる
我々のような平成を生きてきた音楽好き達が口を揃えていう言葉がありますね?
発売日に外に出て、CDショップで手に取ってさ、ワクワクしながら家に帰って聴くというプロセスが楽しいんすよね
発売日やフラゲ日2に、学校帰りやお仕事帰りにCDショップまでわざわざ行って、CDを手に取って、ワクワクしながら帰り、いざプレイヤーの前でCDを開封して再生ボタンを押す。期待が高まったところで得られる興奮は何者にも変えがたいんですね。これは私が元レコ屋店員ということも大いに影響していると思うんですが、ショップに行くことで出会える音楽は間違いなくあるんですよ。サブスクのシャッフルで出会う音もあるかもしれませんが、もっと体験として、実際に目で見て、手に取って、買う、というプロセスを経ることで更に音楽体験の濃度が上がるように感じます。お目当てのCDを買いに行ったついでにぷら〜っと立ち寄った試聴コーナーで聴いた若手のバンドがめちゃくちゃ良かった、とか、熱意のこもったポップを見てつい買っちゃったとか(ショップ店員にとってはコレがいちばん嬉しい)、そういう体験もまた音楽ファンとしての醍醐味だったりする。
今もまだサブスク解禁をしていないバンドの中には、 CDショップへの恩義だったり、音盤に対するこだわり、そして自分たちのポリシーがあって解禁をしていないこともあるので、安易にリスナー側の利益だけを優先して「サブスク解禁しろ!」と恫喝する行為には待ったをかけたい。
3.音質
最近の配信だとかなり音質も向上されていたり、イヤホンで聴くことなど再生環境を想定して音源を作るアーティストもいるらしいのですが、配信音源の音質はCDの音源の音質に比べて格段に落ちます。スマートフォンでのパフォーマンスの限界も理由のひとつです。配信サービスの会社によってはCD音源と同程度の音質のものもありますので例外はありますが、音質まできちんと楽しみたいなら ぜひCDで楽しんで欲しいところ。
4.ジャケットアートワーク、付属の歌詞カードやライナーノーツを楽しむ
CD作品には本体のCD盤の他に、ケースがあり、ジャケットと歌詞カードが付属しています。洋楽の日本盤に多く見られるライナーノーツ(和訳やインタビュー、解説などが載っている読み応えのある小冊子)が封入されていたりもしますね。
ジャケットはまさにCDの顔。
“ジャケ買い”3なんて言葉もあるくらい、あの小さな正方形は目を惹きつけられる小さな芸術作品でもあります。メタルだと愛すべきダサジャケットなどと呼ばれ、一部愛好家にはたまらないジャケ達も。
実体験として私が中学生の頃にやっていたのは、一週目は何もせずにただ音源を聴き、2週目は歌詞カードやライナーを読み込みながら聴く、という楽しみ方をしていました。そのおかげか、今もアルバムまるまる歌詞を覚えているバンドもいたりします。今思えば試験の暗記項目より歌詞のが覚え早かったな。あるあるかもしれません。
5.サブスク解禁していない曲はCDで聴ける
インディーズ盤、サブスク未解禁曲には名曲が多すぎる!!!
説教くさいことはあまり言いたくないんですが、それでもサブスクでは聴けない曲に出会っていないというのはもったいなさ過ぎる!と主張したい!
メジャーなレコード会社から出ているアルバムというのはサブスクでも聴けるものが多いのですが、インディーズ盤は解禁されていないものも多数。例えば、2022年にサブスク解禁をしたMy Hair is Badはインディーズ盤がほとんどがサブスク解禁されていません。彼らのインディー盤は名盤だらけなので、好きなのに聞いたことがないという方は本当にもったいない……。
サブスクで聴いて好きだ〜と思ったバンドがいたら、ぜひ手元にインディーズ盤のCDも入手してほしい!インディーズ盤だからといって廃盤4になっていないものも多いですし、たとえ廃盤になっていて「買えないじゃん!」という場合には、中古ショップで探すのもまた楽しい。そこで出会える音源もあるし。
マイヘアに限らず、メジャーデビューしたバンドでも、インディーズ盤だけはサブスク解禁していないというパターンはよくあります。メジャーで活躍している好きなアーティストのインディーズ時代もぜひチェックして欲しいところ。違う一面が見れるかもしれません。初期衝動浴びちゃってください!
あとはカバーアルバム、アルバム収録のカバー曲は権利の都合でサブスクでは聴けないものも多いですし、あえてボーナストラックはサブスク未収録という形をとるバンドもいますので、サブスクにあるものが全てとは思わず、ぜひぜひ触手を伸ばしてみてはいかがでしょうか?
サブスク以前のCD文化
実体験を交えてお話すると、CD全盛期生まれの自分としては、サブスクが発展することにより気軽に多様な音源をディグりやすくはなったのかなと思います。
“ディグる”とは特にDJがよく使うHIPHOPスラング。元はレコード屋で良い盤を探す・発掘するという行為が語源だよ。例えば、過去の音源を発見したり、良い音楽を探す行為のことを指してディグるっていうんだ。レコ屋頻出単語のひとつだね。
平成後期〜令和リスナーはサブスクを有効活用されていると思いますが、2010年代中期以前にはサブスクのサービスは今ほど浸透していませんでした。もちろん、筆者の中高生時代、言うならばロックにハマりたてでとにかくたくさんのバンドを聴きたかった時代には、サブスクのサの字もなかったと記憶しています。
私のそんなロックひよこ時代は00年代前半。当時のYouTubeやニコニコ動画にある音楽関連の動画は個人の違法アップロードが多く、オフィシャルからミュージックビデオが上がるのも大体00年代前半から細々と始まった印象。今みたいに先行でミュージックビデオ公開というのもあまり記憶にない。何ならアイドルだけじゃなく、バンドもミュージックビデオクリップなどの形で、作品集としてDVDでの販売をしていましたね。
テレビで音楽番組がいっぱいやってるわけでもあるまいし、サブスクもYouTubeもなかったらどうやって好みのバンド見つければいいの?ぜったい無理じゃん!
今みたいに便利ではないけれど、当時はアナログな手法で欲しい情報を得られました。
しかし、中学生にはお金がない。1枚3,000円ほどするCDを何枚も買うなんて到底無理。なので、ロッキンオンジャパンやミュージックマガジンなどの音楽雑誌を読んで気になるアーティストを探したり、実家がスカパー加入していましたので、スペースシャワーTVやMUSIC ON! TVをひたすら流し見したり。ブックオフで中古CDをディグったりもしていました。
あと近所にTSUTAYAがあり、当時はサブスクの代わりにレンタルが盛んな時代でした。そして近所のTSUTAYAはCD10枚1,000円というキャンペーンを常にやっている店舗でした。なので、10枚借りるうちの半分ぐらいは知らないバンドや知らないジャンル、ジャケ借りをしてひたすら聴いて、特に気に入ったバンドがあれば週末の休みにCDを買いに、電車に乗ってタワーレコードやディスクユニオンに行く、という生活でした。
友達同士のCDの貸し借りで、CDショップのショッパーに入れて貸すのがちょっとカッコ良かったりもしたね
そんなに仲良くない友達ともCDの貸し借りだけの利害関係があったりして、そういう思い出も含めてCDには並々ならぬ思い入れがあります。
CDプレイヤー、コンポ
CD買って欲しいのは分かったけど、どうやって聴くのさ?
スマートフォンで音楽を聴ける時代ですから、家にコンポやプレイヤーを置いている人は少ないですよね。
平成中期には一家に一台は必ずプレイヤーがありました。親や兄弟、先輩からのお下がりで、自室にプレイヤーを持っている少年少女も多かったはずです。かくいう私もそう。
CDを聴く楽しみを増幅させるには、やはりプレイヤーも楽しんで選んで欲しい。
もう売ってないんじゃ?需要なくて高いんじゃないの?みたいな心配はご無用です。多機能だったり、お手頃価格なものも、コンパクトで可愛いCDプレイヤーもまだまだ取り扱いはあります!
多機能プレイヤー
どうせならCDだけじゃなくて他の機能も欲しいな、という方にはおすすめ。
私が自宅で利用しているのもこのタイプ!ラジオやBluetooth機能があるものもあるので、一台あればCDを聴く以外にも色々と使えて便利だし、長く使えて楽しめます。コンポのタイプ電池が使えれば災害時にはラジオにも仕様できたりして備えにもなるので、ぜひ一家に一台!
壁掛けプレイヤー
インテリアにもこだわりたい方は壁掛けプレイヤーはいかがでしょうか?
韓国の雑貨屋さんみたいな雰囲気にも合うし、無印のようなシンプルなインテリアにもマッチするプレイヤーです。いろんなデザインのバリエーションがあるし、何よりコンパクトで場所を選ばないのが最大の利点です。
ポータブルCDプレイヤー
CD世代の皆さんには懐かしすぎて涙が出そうなこのフォルム。そうじゃない方には何だかオモチャみたいにも見えそうなこれは、CDのポータブルプレイヤー!今となっては利便性は高くありませんが、当時はかなり画期的でした。出先や移動中にもお気に入りのCDを持ち歩いて聴けちゃいます。90年代〜の感性溢れるアイテム。
最後に
以上、CD好きによるCD布教記事でした。
溢れ話として、レコ屋店員時代に上司に聞いたことがあってよく覚えているエピソードをひとつ。
それは「CD音盤もそろそろ寿命を迎え始める」という話。再生不可のCDを目の前にした雑談なんですけど。CDは音質もよく保存にも優れている媒体ではありますが、実は寿命が30年〜50年ほどと言われています。もちろん、生産工場や保存状態も影響してくるとは思いますが、 CDなどの光ディスクが生産され始めたのは実は1970年代。歴史が短い媒体なので、皆様もこれから古いもので寿命を迎えたものと中古市場で出会うかもしれませんね。
とはいえ、裏を返せば、お手入れしたり保存状態に気をつけていればそれほど長く聴けるものですし、盤だけじゃなく、ジャケットワークや帯などの付属品も全部ひっくるめて、手の中に収まる一個の小さな作品です。
CDを愛するものとして、これからも無くなってほしくないメディアだと思っています。
▼脚注
- Z世代:90年代半ば〜00年代生まれの若者のこと。生まれてからすでにパソコンや携帯電話に慣れ親しんでいる世代。 ↩︎
- フラゲ日:フラゲ=フライングゲット。発売日の前日に店頭に並んでいて購入することができること。 ↩︎
- ジャケ買い:ジャケット買いのこと。内容を全く知らなくても、ジャケットやパッケージのデザインだけを見て購入を決めること。 ↩︎
- 廃盤:CD・DVD・レコードなどの円盤の原盤(オリジナル)を廃棄し、製造を終了すること。 ↩︎