【モッシュ・ダイブ】もっとライブを楽しみたい!モッシュ・ダイブのやり方や危険を学ぼう

コラム

こんにちは!
前回の記事ではフェス初心者の方に向けて注意することや持ち物などを紹介させていただきました。

 上記の記事の中で『注意すべきこと』としてモッシュやダイブの話をしましたが、今回はモッシュ、ダイブなどのライブシーンから生まれ、根付いてきた独自のカルチャーについて掘り下げてご紹介いたします!

モッシュとは?

 モッシュ(mosh)とは、観客が密集したエリアにおいて無秩序に体をぶつけ合う状態・行為のことを指します。激しいおしくらまんじゅうみたいなものです。モッシュが発生したエリアのことをモッシュピット(mosh pit)と呼びます。パンクやラウドロックなど比較的激しい音楽ジャンルのライブでよく見られる光景です。

 モッシュの起源は諸説ありますが、80年代のアンダーグラウンドパンク、USハードコアのライブシーンから生まれたとされています。パンクは反体制の音楽です。ライブハウスというのはバンド側にとってはもちろんのこと、観客側にとっても、日頃抑圧されている内なる熱の放出の場であり、自己表現の場だという意味合いが強かったと言えるでしょう。昔のパンクバンドのステージパフォーマンスは今よりも過激だったので、それに呼応するようにフロアも熱狂していったと考えられます。パンクシーンから、ハードコアに接するメタルシーンへ、そしてその後のグランジ、オルタナティヴロックのライブシーンにもモッシュやダイブの波が広がっていきました。

モッシュの種類

概要)会場の熱狂具合とバンドとの呼応

モッシュ

 モッシュとは、観客たちが密集エリア(=モッシュピット)で無秩序に体をぶつけ合ったり、揉みくちゃになったり、飛び跳ねたり、踊ったりする行為全般を指します。ジャンルによってモッシュの方法や種類は異なり細分化されます。ただ立ってステージを見ているだけでなく、観客ひとりひとりが音楽にノって体を動かし、体がぶつかり合うようになることでモッシュが生まれるのです。

サークルモッシュ

 モッシュの派生系でサークルモッシュというものがあります。ただサークルと簡単に呼ぶことも。
 モッシュは無秩序にもみくちゃになるのに対し、サークルとは円状の空間の中で行われるモッシュのことで、その空間をサークルピットとも呼びます。

 サークルとして基本的なものは、サークルピットと呼ばれる大きな円のような空間を作り出した後、その中を左回り(反時計回り)で渦潮を作り出すように観客たちが走り回ることを呼びます。サークルの内外でハイタッチをしたりすることも。

 あとは、曲によっては、サークルピットを作り上げた後、サビに入った瞬間に円の中心に向かって群衆が飛び込み、無秩序に体をぶつけ合うタイプのサークルモッシュも存在します。大きく分けてこの2パターンだと思います。

 小中規模のライブハウスよりかは、スタンディングエリアの広い野外フェスや大規模ライブハウスホールなどの会場でよく見られるモッシュです。

その他のモッシュ

 多分他にもあるかもしれませんが、私自身が見たことある・やったことあるモッシュを追加でピックアップ。

ウォールオブデス

 ウォール・オブ・デス(WOD)ウォールとも呼ばれるモッシュ。
 モーセの十戒のごとく、観客の波が左右に真っ二つに分かれて、サビなど盛り上がる部分に真ん中へ駆け寄ってぶつかり合う危険なモッシュです。人と人とが全速力でぶつかり合う衝撃はかなり大きく、最前列は特に危険です。過激であるからこそ、迫力があり興奮度の高いモッシュでもあります。
 参加する際は当たりどころや転倒には注意しましょう。

ハーコー(ハードコア・モッシュ)

 ハードコア界隈で発生する、通称ハーコーと呼ばれるモッシュ。テコンドーモッシュウィンドミルなんて言い方もします。このモッシュは局地的なもので、ビートダウンハードコア1と呼ばれるジャンルにおいて発生するので、なかなか目にする機会がないかもしれません。

 開けたモッシュピットの中で、両手足を振り回し、パンチやキックを繰り出す格闘技のようなノリのモッシュです。基本的には人に当たらないようにしていたり寸止めしてくれるはずですが、不用意にピットを横切ったり近づいたりすると怪我の危険があるため注意が必要です。

横モッシュ

 V系バンドに多いのが横モッシュ。でも時々ラウドロックや邦楽ロックでもやるバンドがいます。
 読んで字の如く、観客が右へ左へと同じ方向に移動するモッシュ。無秩序に入り乱れる通常のモッシュと違い、立ち位置があまり変わらないので比較的安全性が高いかもしれません。アーティスト主導で指揮をとってくれる場合も多いです。
 V系の場合は必ず立ち位置に戻るという話を聞いて、整理番号を重要視するV系界隈のルールを感じ、ロックファンからするとなかなか興味深かったです。

ダイブ

 ダイブ(dive)とは、ステージ上、もしくは柵や人の肩の上から観客の頭上に飛び込む行為のことを指します。ダイブをする人をダイバー(diver)と呼び、ダイバーを観客たちが手で持ち上げて運んでいく行為をクラウド・サーフと呼びます。激しいライブの映像とかで、観客の上をステージに向かってゴロゴロ転がっていっていくのを見たことがある人は多いのではないでしょうか?

ステージダイブ

 アーティストや観客がステージ上から観客側へ飛び込むダイブのことを、そのままステージダイブと呼びます。
 割と多いのはバンドメンバー、特にボーカリストが最前列中央のモッシュピットへ飛び込んでくるパターンが多いです。ワイヤレスのギターやベースを使っているメンバーが背中から飛び込んでくるのも見たことがあります。

増井鮫
増井鮫

余談ですが、ワイヤレスのギターじゃないギタリストがステージダイブして、観客が一丸となりギターのシールドを運んでいたのは中々シュールな光景でしたね…。良い思い出です。

 観客のステージダイブの例としては、小さいライブハウスでステージと観客席がほぼゼロ距離の時などに、ステージ側から客席へ飛び込むパターンがあります。が、個人的に思うのは、ステージ上にはエフェクターなどの大事な機材もありますし、アーティスト側からの許可がない限り、観客がステージに上がるべきではないと思います。

クラウドサーフ

 激しいライブの映像で、観客の上をステージに向かってゴロゴロ転がっていっていくのを見たことがある人もいるのではないでしょうか。手を挙げている観客たちの上を転がり運ばれていくのがクラウドサーフです。
 よくあるのは、曲のサビ直前に周囲の人の背中や肩を借りてリフト(肩車や背中をよじ登り頭上に上がる行為)してもらい、サビに入ったタイミングで、ダイブ、クラウドサーフに移行するといった形です。

 ダイバーはステージ前方のセキュリティスタッフに下ろしてもらうか、ダイバーをさばいてくれているファンの善意に甘えて下ろしてもらいます。

 ダイブをしない人でも、前方エリア(特に最前列付近)では後方から流れてくるダイバーに気をつけなければいけません。ダイバー自身が気をつけるのは当然のことですが、モッシュエリアでは一人一人が自分の身を守ることも重要です。ダイバーが多発するような楽曲の時には、後方に注意し、万が一の時には頭や首を守れるようにしておきましょう。

 ダイブをする上でのNG行為、注意すべきことを下記にまとめました。

1.足をバタバタさせるのはやめよう
 …足をバタつかせたり暴れたりすると周囲に怪我をさせてしまう恐れもありますし、自分自身が身長より高い場所から落下する危険性もあります。ダイブの姿勢は仰向けで流れに身を委ねてください。

2.周囲の人を怪我させるような格好ではやめよう
 …アクセサリーやチェーン、ベルトなど、当たったり引っかかったりすることで怪我に繋がるような危険な装飾品は身につけていないかチェックしてから飛ぶこと。ポケットの中のものも落ちますので気をつけて。女性は長い髪の毛はお団子などコンパクトにまとめた方がいいです。

3.節度を守ろう
 …ダイブをするためにライブに行っているわけではないはず。何度も何度も飛んでいるダイブ目的の輩は周囲も気がつきますし、良い気分はしません。節度を持って飛びましょう。支えるのが難しい女性が多かったり、そのライブがダイブを許容している雰囲気ではない場合は、ダイブをしない選択をするのもマナーです。

ダンス・ステップ

 フェスやライブにおいて何やら似たようなステップやダンスをしている人を見かけることがあります。
 ここではフェスやライブハウスでよく見るステップを二つご紹介します。

ツーステップ(ツーステ)

ライブキッズにおすすめ

 激しいバンド、特にラウド系のライブでよく見られる、ツーステップ、ツーステと呼ばれる動き。
 反復横跳びに似ているような動き。右左と行き来して蹴るようにステップを踏みながら、手も振り落とすのを繰り返すステップ。言語化が難しいので上記二つのMVを参照してみてください。

 日本のフェス/ライブシーンにおいてツーステを広めたのは、ハードコア/ラウドロックバンドSiMの影響が大きいと思います。
 彼らが2012年に「Amy」をリリースした際、Vo.MAHが披露したツーステが多くのライブキッズたちに真似され、ハードコア、ラウドロックシーンからメロコア、ロックへと広がっていきました。昨今では地下アイドル(バンドアイドル)の現場でも見られるようになっているということで、ライブシーン定番のステップと言っても過言ではないでしょう。

スカダンス(スカダン)

 ▲Kitty Skankがお気に入り(※Skank、Skankingとは、スカの本場ジャマイカのダンスホールで生まれたステップで、その後80年代の2トーンスカの時代に復活したSkaDanceの一種です)

 その名の通り、スカ、スカコアの曲でよく見られるのがスカダンススカダンとも呼びます。
 スカダンは地面を前に蹴り上げ、腕を曲げたまま前後に動かしたり、曲げたり伸ばしたりして踊るダンスのことを指します。ツーステは横方向だけど、スカダンは前方へのアプローチと言えばわかりやすいかもしれません。
 とはいえスカダンスは、ガチガチな感じで「次のライブで踊ろう!」と練習して行くのも野暮な感じがするので、スカのリズムに乗って楽しくダンスして良いと思います。フィーリングを大事に!

その他

 モッシュやダンスの分類外ですが、ライブでよく見られるものをご紹介。

ヘッドバンギング/ヘドバン

 曲に合わせて頭を振り上げたり振り下ろしたりする動作を、ヘッドバンギング(head banging)、ヘドバンと呼びます。
 ヘヴィメタルなどの激しいバンドのライブでよく見られます。バンドのライブだと上下が多いですが、これがV系の現場になると髪を振り乱す八の字のヘドバンが主流です。

 ヘドバンは首や頚椎、脳に大きな負担がかかるので、やり過ぎには注意が必要です。ヘルニアや脳出血の危険性もあります。開始前に首のストレッチをしたり、力を入れすぎないようにしましょう。首からではなく体全体を使い、腰から下ろす折りたたみヘドバンもオススメです。

フィストバンギング

 曲に合わせて拳を振り上げ、突き上げる行為フィストバンギング(fist banging)と呼びます。
 フィストとは英語で「握り拳、ゲンコツ」の意味。オイ!オイ!という掛け声に合わせることが多いです。

シンガロング

 シンガロング(sing along)とは一緒に歌うという意味のごとく、アーティストと観客が一体となって歌うことです。アーティストに続いて歌うのがコールアンドレスポンスですが、シンガロング曲のサビだったりシンガロングパートを会場全体が歌うことで、一つになるような感覚があり、ライブの醍醐味とも言えます。
 メロコアやメロディックパンクでは特にシンガロングの楽曲が人気だったりします。

最後に

 モッシュやダイブについては、その是非を問うような議論が度々持ち上がります。
 ダイブやモッシュが好きな人もいれば、嫌いな人もいるのは当然のことです。「自己責任は無責任じゃないか」「主催者側の責任じゃないか」という意見を受けて、文化が消えていくのもまた時代なのかもしれません。
 しかし、私個人としては、パンクやロックバンドのライブにおいて、熱狂が可視化されるモッシュやダイブという文化を消してしまうのは惜しいと思ってしまいます。自由な場所を守っていくためには、最低限のルールを守ったり、思いやりを持たないといけません。脱げたスニーカーや落としたスマホを拾ってくれたり、強くぶつかってしまったら謝り合ったり、転んだ人に手を差し伸べたりする。倒れた人がいたら周りが守る。今までそういう光景を数々見てきたからこそ、強く思います。
 今日も最高のライブだった!と振り返れるようなライブを作るのは、出演者だけではなく、参加者ひとりひとりの行いです。一回一回を最高のライブにしていきましょう!

▼脚注 ※末尾の矢印(←)クリックで本文の該当箇所まで戻れます

  1. 【ジャンル解説】ビートダウンハードコアBEATDOWN HARDCORE。ニューヨーク・ハードコア(NYHC)から細分化されたハードコア・パンクの一ジャンル。労働者階級の屈強な男たちのタフガイ精神が支柱にあり、ヘヴィ・メタルの要素も兼ね備えた、攻撃的で重たいシリアスなサウンドが魅力。Beat Downが日本語訳で「殴り倒す」、そして音楽的には、速く激しいハードコアに比べてテンポを落とした重いビートのことを指している。 ↩︎
増井 鮫

平成生まれ平成育ち。好きなジャンルは日本のロック・ポップス、インディーズ、メロディックパンク、アイドル。元レコ屋店員。発散場所がなくなったのでブログ開設。売りは熱量のみというしがないオタクです。

増井 鮫をフォローする

タイトルとURLをコピーしました